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在留特別許可判例紹介コラム(東京地裁平成16年11月5日)

皆さんこんにちは。
このコラムでは、在留特別許可に関する判例をご紹介しています。
本日ご紹介する判例は、不法入国した妻と不法残留の夫のフィリピン国籍の夫婦の間に出生した子らに対する退去強制手続について、当時10歳、6歳、3歳半の子らに在留特別許可を認めなかった東京入国管理局長の判断に裁量権の逸脱又は濫用があったとは認められない一方、当時15歳の子に在留特別許可を認めなかった判断には裁量権の逸脱又は濫用があったとして、フィリピン人原告らの訴えを一部認容した事例です。

事案の概要

フィリピン国籍の原告A(妻)は偽造パスポートで日本に不法入国、原告B(夫)は15日の短期滞在で日本に入国してから在留期限を超えて不法滞在している。原告Aと原告Bの間に生まれた子らである原告C(15歳)、原告D(10歳)、原告E(6歳)、原告F(3歳半)も在留期限を超えて不法滞在している。これら不法入国、不法滞在により原告らは退去強制事由に該当するとして退去強制手続が開始され、原告らからの異議の申出にも理由がないと裁決を下して退去強制令書が発付された。本件は、原告らに在留特別許可を認めなかった裁決には裁量権の逸脱又は濫用があり、この裁決に基づいた退去強制令書の発付も違法だとして、原告らがこれら裁決と退去強制令書発付処分の取り消しを求める事案。

主な争点

原告ら、特に子らに対して、特別に在留を許可すべき事情があるとは認められないとした判断が裁量権を逸脱した違法なものかどうか

コメント

まず、在留特別許可を認めるかどうかについての法務大臣の判断が違法とされるのは、その判断が「全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある場合に限られる」ということが前提になります。
夫婦である原告A、原告Bについては、偽造パスポートによる不法入国と在留期限を超えての不法滞在、その後17年間にもわたる不法就労など在留状況は極めて不良であり、日本の出入国管理行政の適正を著しく害すると言わざるを得ないので、原告Aと原告Bに在留特別許可を認めなかった裁決は、「全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある場合」とは言えないとしました。
また、原告Aと原告Bとの間の子である原告D(10歳)、原告E(6歳)、原告F(3歳半)については、不法滞在者になったのは原告Aと原告Bとの間に生まれたからで自分たちではどうすることもできない事情によるものです。さらに、日本で生まれて成長してきたためタガログ語や英語を全く話すことができず、フィリピンで暮らした経験もないことを考えると、フィリピンに強制送還することによってこの子らに与える影響は決して小さなものではありません。ただ、3人とも10歳、6歳、3歳半とまだ幼いことから十分な判断能力が無く、また親である原告Aと原告Bと共にフィリピンで過ごすことで次第にフィリピンの生活環境になじむことができるだろうと予想できるので、フィリピンに強制送還することによってこの子らに与える影響は、親である原告Aと原告Bと共に暮らすことができない場合に与える影響よりも小さいと考えられます。したがって、この子ら3人に在留特別許可を認めなかった裁決は、「全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある場合」とは言えないとしました。
一方で、原告Aと原告Bとの間の子である原告C(15歳)については、他の子ら3人と同様、不法滞在者になったのは原告Aと原告Bとの間に生まれたからで自分ではどうすることもできない事情によるものです。また、原告Cについては15年間という長期にわたって日本人の子供と全く変わりない生活をしているため、言語も生活習慣も全く異なるフィリピンで生活するのは非常に困難なことが予想されます。さらに、原告Cは既に中学3年生になる直前で判断能力があり、日本で学習を続けて将来日本で仕事をすることを強く希望しています。しかしながら、東京入国管理局長が裁決をした際、上記のような原告Cの具体的な生活状況や学習状況について十分な調査や考慮がされていなかったことが認められるため、原告Cに在留特別許可を認めなかった裁決は、「全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある場合」に該当するとしました。
この判例は、外国人の未成年者がその親と共に国外に退去するかどうかという選択を自分ですることができる場合であってもその未成年者の選択によらずに強制的に国外に退去させることが東京入国管理局長の裁量権の逸脱又は濫用にあたるかどうかという問題についての事例です。当事例は、不法滞在者の家族について在留特別許可を認めるかどうかはあくまでも個別的に判断されることが原則であるという見解に立った上で、原告子らについて、個別的に在留特別許可を認めないことが裁量権の逸脱又は濫用に当たるかを判断している裁判例の一つとして、今後の同種事案の処理の参考となるでしょう。

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